俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 意外だった。カリッドに妹がいるということも、女性の髪形のアレンジが得意だということも。残念ながらモニカにはそのような器用なことはできない。だからいつも一つに結わえているだけ。三つ編みだってできない。
 今はヘアピンで、本を読むのに邪魔だった前髪を真上で留めているだけ。だから、おでこ丸出し。

「髪、触るぞ」

 そう口にしてから、カリッドがモニカの髪に触れた。こうやって家族ではない他人に髪の毛を触れられるのも、モニカにとっては初めてのことだ。毛先が頬や首元に触れ、少しくすぐったい。

「ほら、できたぞ」
 鏡が無いからよくわからなかったけれど、いつもと違う髪型になっているのだけは確かだった。前髪はすっきりとしているのに、両肩から胸元に流れる髪が視界に入る。
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