俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ

2.

 閨教育を通してカリッドが得たものは、女性には女性にしかできないことが、男性には男性にしかできないことが、そして男女ともにできることがあるということを学べたことだった。体の造りの違いが、それぞれ活躍できる場所の違いがあるのではないかと思えてきた。また、男女の違いの影響を受けないようなところでは、男性だから女性だからという区別をせずにその能力に長けた人を配置することで、効率よく業務がこなせるのではないか、ということも。
 この教育が、第四騎士団の団長となったときのカリッドの考え方の原点になっているといっても過言ではないのだが。

「カリッド様。そろそろ実技に移りましょうか」
 そうドーランが言い出したのは、閨教育を受けて六回目の時だった。それまでは教本を元に身体の男女の造りの違いや、どのようにして子供を育むものか、そしてどうしたら子供が誕生するのか、という内容を受けていた。そしてそこで知ったのは、十数日前におもらしをしてしまったと思って焦ってしまった目が覚めた朝があったのだが、それはおもらしではなかったということ。下着が濡れて焦っていたけれど、ばあやはいつもと変わらず新しい着替えを準備してくれた。つまり、それが大人になる準備が整った、ということだったのだ。

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