俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 この国は様々な部族たちがいくつか集まってできている。封建主義的なのがこの国の特徴でもある。
 たまにモニカの両親がここの王族関係者に呼ばれて城で開かれる催しものに参加するときもあるのだが、それには部族の伝統衣装を纏う。だから、母親もドレスは持っていないしモニカも伝統衣装は持っているが、ドレスは持っていない。実は、モニカの家もその部族の中ではそれなりに格式ある家柄ではあるのだ。だけど、騎士団に入団するときにはそれを隠していた。書類の偽造、ではない。必要なことを記載しなかっただけ。だって、そこには任意と書いてあったから。

 そんなモニカの実家、つまりその村は、この王都から馬を一昼夜走らせた場所にあった。今からその民族衣装をとってきて、というわけにはいかないだろう。

「では、買いに行く」

「え、そんな急に?」

「急ではない、店には連絡を入れてある。最後に君がそれを着て、確認するだけになっている」

< 34 / 177 >

この作品をシェア

pagetop