俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ

5.

 お高いお店を後にして向かった先は、これまたお高いレストランだった。だからお高いワンピースに着替えさせられたのか、とモニカは理解した。

「恐らく、俺の両親と一緒に食事をすることになると思う。だから、少し練習をした方がいいと思って、だな」

「はあ」
 とまた右手を拘束されているモニカは、そう返事をすることしかできない。逃げたいけれど逃げられない。何しろ、右手はしっかりと彼の手によって拘束されているから。
 あの店でドレスの確認をし、レストランに着くころには太陽は沈みかけていて、その顔の頭二割しか地上に見せていなかった。薄暗くなりつつある。空はオレンジから紫、そして藍色のグラデーションを作り出そうとしている頃。

 レストランに入るときも、モニカの右手は拘束されたままだった。お高いレストランはその場所もお高いところにあり、夜景をみおろすことができる。しかも窓際で、半個室という、かなりいい席ではないのだろうか。

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