俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ

2.

 とりあえずイアンの部屋で一度己を鎮めてから部屋に戻ったカリッド。その部屋の鍵が開いていたということは、モニカは風呂からあがったのだろう。
 イアンの「少々刺激が強い」という言葉に不安を覚えていたが、とりあえず堂々と部屋に戻ることにした。モニカの前で情けない姿を晒すわけにはいかない。

「あ、だ……リディ。お戻りになられたんですね」

「あ、ああ」
 彼女が一体どのような恰好でいるのか、といろんな想像をしてしまったカリッドだが、普通にガウン姿だった。

「すいません。なんか、あの、せっかく準備していただいたあの夜着なのですが、布地面積が少ないといいますか、寝るには心許ないといいますか、それで、そのこちらに着替えさせていただきました」

「いや、かまわん。風呂、入ってくる」
 極力モニカに視線を向けないようにして、カリッドは浴室へと逃げた。一人になると右手を壁につき、うなだれる。

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