俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ
 寝起きだからか、モニカの呂律が回っていない。
 落ち着け、俺、とカリッドは心の中で唱えてから。

「モニカ、そんなところで寝ては風邪をひいてしまう。寝台で寝ろ」

「あ、はい。すいません。なんか、ちょっと気が抜けたら眠くなっちゃって」

 しょぼしょぼとする目をこすりながら、モニカは立ち上がった。

「でも、団長。このお部屋、寝台が一つしかなくて、どこで寝たらいいかわからないんです」
 奥の部屋へと向かう途中で、モニカが言う。カリッドは思わずゴクリと喉を鳴らしてしまう。

「とにかく、寝台できちんと毛布をかぶって寝ろ」

「はい」
 広い寝台にそろりと腰をおろし、そしてゆっくりと足をあげるモニカのその姿はカリッドの目にとっては毒だった。それでもモニカはよほど眠かったのだろう。毛布でくるりと自らを包むと、すぐに規則正しい寝息を立ててしまった。

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