俺の恋人のフリをしてほしいと上司から頼まれたので「それは新手のパワハラですか」と尋ねてみたところ

5.

 カリッドは一歩すすんだ口づけを交わしたいと思っていた。もっと彼女を味わいたい、と。彼女の唇のつなぎ目から、その舌を侵入させてみる。ぴくっとモニカの身体が震えたのがわかった。でも、ここまできたらやめられない。
 彼女の少し薄い舌に自分のそれを絡めようとすると、彼女の身体がまたピクリと反応する。そして彼の執拗に攻める舌から、己のそれを逃がすかのように動き回っていた。だが、所詮狭い腔の中。逃げられるわけがない。

 カリッドにとっては、そのような反応を示してくれるモニカが愛おしく感じられた。それでも、初めて触れる彼女の口腔を味わうことはやめられない。
 上顎の少し柔らかいところを舌先でつついてみると、またピクッとモニカが身体を震わせる。だがカリッド自身もそろそろ我慢ができなくなる頃。名残惜しいけれど、彼女の唇を解放した。
 飲み干すことのできなかった唾液が、少しモニカの唇を濡らしていた。カリッドはそれを自分の親指で拭いとる。

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