狂った隣人たち
「床下から臭ってくるな」


祐次はそう言うと窓を開けた。


外の空気が入り込んできても、悪臭のほうが勝っていて少しもマシにならない。


えずきそうになりながら祐次は親指ほど空いた穴にスコップの先端を突き刺した。


今度はしっかりと床板に食い込んでいく。


力をこめるとベリベリと床板がはがれていく音が響き、大きな板が持ち上がっていった。


くるみは慌てて祐次とは逆側へ移動して、お札まみれの板に手を伸ばした。


ゆっくりと畳の上におろしていくと、更に異臭は強くなる。


「べつに、なにもないみたいだけどな」


祐次が真っ暗な床下を覗き込んだ次の瞬間だった。


突然窓がバンッ! と大きな音を立ててしまったのだ。


そのまま雨戸も閉められてしまう。


咄嗟にくるみが雨戸を開けるために手を伸ばしたけれど、すでにびくともしなくなっていた。


逆側のふすまに飛びついて確認してみるが、こちらも開かなくなっていた。


サッと全身から血の気が引いていく。


また、閉じ込められた……。


2人は身を寄せ合ってポッカリと空いた穴から距離をとった。


「どうするの? 出られなくなっちゃったよ」


「どうすればいいのかわからない」


祐次は正直に答えてくるみの手を握り締めた。
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