狂った隣人たち
☆☆☆

心配ごとも多かったけれど、和宏はぐんぐん成長して行った。


好奇心が旺盛でなんにでも興味を示し、どこへでも行きたがる子供だった。


和宏が2歳になったとき弟の浩司も生まれて家の中はてんてこまいになった。


とても和宏だけに構っている暇はないし、お互いの両親もよく家に来て子育ての手伝いをしてくれた。


「和宏、お前はお兄ちゃんになったんだ。弟を大切にしてやれよ」


そう言うと、和宏は決まってうなづいてそっと指先で孝司の頭をなでるのだった。


「兄貴、俺のベーコン食べる?」


月日は流れ、和宏17歳。


孝司15歳になっていた。


2人とも見違えるほど大人っぽく成長し、今では家が手狭に感じられるほどになっていた。


「ありがとう」


弟から大好物のベーコンをもらい、和宏はお礼に孝司の皿にイチゴを乗せた。


「イチゴって。俺もう子供じゃないんだから」


「いいじゃない。イチゴ、今でも好きでしょう?」


「そうだけどさ」


子供扱いされることが恥ずかしいようだけれど、孝司は素直にイチゴをほお張った。


大きなイチゴを丸ごと口の中に入れたからまるでハムスターみたいだ。


そんな孝司を見て微笑んでいるとあっという間に出勤時間になってしまった。
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