狂った隣人たち
「本当に、そうだよねぇ」


くるみは力なく答える。


「でも、隣の家って殺人事件があったあの家ってことだよね?」


突然の質問にくるみは「シッ!」と、人差し指を口に当てて静止した。


祐次があの家にいるなんてバレたら、それこそ大騒動になりかねない。


学校内でもあの事件は大きな衝撃となって波紋を広げた。


くるみのもとに色々と聞きに来る生徒も多く、逆にくるみを事件の当事者のように腫れ物として触れる生徒も出てきたくらいだ。


一ヶ月経過して、ようやくその波紋が収まりつつある状態なのだ。


余計なことを口に出したくはなかった。


リオもそれを察したようで「ごめん」と、小声で言ってきた。


「学校案内ってくるみがしてくれるんだよな?」


途端に声をかけられて振り向くといつの間にかそこに祐次が立っていた。


突然呼び捨てに戸惑いながらも周囲を見回す。


祐次の後ろには複数の女子生徒が立っていて、まるでボディーガードみたいだ。


「え?」


くるみはキョトンとした表情でまぬけな返事をしてしまう。


あれだけ女子生徒に囲まれているのだから、学校案内くらい誰にでもしてもらえそうなものなのに。
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