狂った隣人たち
☆☆☆

一通りの学校案内が終わって職員室へ向かうと、くるみは担任の先生からキャラメルを2つもらった。


「お疲れ様。これお駄賃ね」


そう言って手渡されたキャラメルのひとつを祐次にあげる。


「なんだか女子たちがすごく興奮しているみたいだけど、学校生活は大丈夫そう?」


「はい。すぐに収まると思います」


「それならいいんだけど。先生も注意して見ておくからなにかあったらすぐに相談してね? 津田さんも、力になってあげて」


言われなくてもそうするつもりだった。


これ以上祐次が人気になって会話もままならなくなるのは悲しいから。


「それじゃ、2人とも気をつけて」


簡単な会話が終わって職員室から出ると、自然と2人で肩を並べて帰路を歩くことになる。


部活動で残っている生徒たちからチラチラと視線を送られるけれど、家の場所がほとんど同じなのだから仕方がない。


「先生も言ってたけど、女子たちが困ったことをしたらなんでも相談してね」


「ありがとう。くるみが同じクラスで安心したよ」


本当にホッとしたような笑みを浮かべる。


その笑みはまだ幼い少年のように見えてくるみの胸がまた高鳴った。
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