狂った隣人たち
「お邪魔します」


3時になる10分前、くるみは大神家の玄関に立っていた。


少し早い時間なのを気にしながらもチャイムを鳴らすと、すぐに祐次が出てきてくれたのだ。


「待ってたよ」


玄関には祐次の靴しかなくて、家の中は静まり返っている。


「ご両親と弟さんは?」


「3人で買い物に行った」


それを聞いて少しだけ緊張が解ける。


家族全員で出迎えられたらどうしようかと考えていたのだ。


安心したくるみは家の間取りを確認する余裕ができてきた。


玄関から真っ直ぐに廊下が伸びていて右手には和室の襖が見えている。


しかし襖の前にダンボール箱が3つほど置かれていて中に入るのをさえぎっているように見えた。


荷物が片付いていないというのは本当のことだったようだ。


祐次は和室とは逆側のドアを開けて中へとくるみを案内した。


そこはダイニングキッチンになっていて、広さはくるみの家とあまり代わらない。


リビングのソファに座って大きな窓から外を見ると、自分の家のリビングが見えた。


薄いカーテンの向こうでソファに座っている両親の姿になんだか不思議な気分になる。


まるで自分がこっちの家の子供になってしまったかのような感覚だ。


「紅茶でいい?」


「うん。なんでもいいよ」


祐次が入れたての紅茶とクッキーを準備してリビングへ戻ってくる。
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