ママの手料理 Ⅱ
毎回、真夜中に家に帰ると安心した顔をして飲み物を出してくれていたのは湊で、その隣で何故か泣きながら俺の帰還を喜んでいたのは……仁だ。



「……何で?」


階段を上りきった俺は、思わず後ろを振り返って彼に尋ねていた。


どうしてこの人は、そこまでして俺にこだわるのだろう。


養護園の時から仲も悪くて顔を見るだけで嫌気がさして…、お互いそんな生活をしていたのに、どうして俺が居なくなった時にはいきなり母性を発揮するのだろうか。


怪訝そうな顔をした俺を見つめる仁は、一瞬目を泳がせて。


しかし次の瞬間、


「君が、毎回何処かの女の子達をナンパして僕達の正体を言わないか心配で寝れないの。分かったらそこ退いて、階段上れないから」


茶色のリストバンドをした左手を振り、しっしっ、と、俺を階段の目の前から退かせた。



「………」


何なんだあの態度、全くもって納得がいかない。


(俺がナンパ…?ナンパするのは俺じゃなくて仁でしょ!しかも俺女の子に興味無いんですけど!?)



俺が琥珀に告白したあの日以降、mirageの皆には俺が異性愛者ではない、という事実が瞬く間に知れ渡った。


偏見を持っている人が居なかったのが不幸中の幸いだったものの、それを知っておきながら女がどうこうと言う仁は何て奴だ。
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