ママの手料理 Ⅱ
「俺が目覚める直前も琥珀の声が聞こえて…。だから、多分琥珀が声を掛け続けてくれなかったら、俺ずっと眠ったままだったかも」


不格好にちぎれたみかんの皮を見つめながら話していた俺は、ふと彼の方を見上げてぎょっとした。


何故なら、琥珀の目が潤んでいるように見えたから。


「だから…ありがと。起こしてくれてありがとう」


俺、今琥珀を感動で泣かせたかもしれない…!、と、何だか胸が詰まる思いで感謝を伝えると。


「うわ、今お前のせいで鳥肌立ったわ…そういうキモい事は今後一切俺の前で言うなよ」


片腕で右腕をゴシゴシと擦りながら、何とも酷過ぎる言葉が飛んできた。


「え、感謝の気持ちを伝えるのも許されないの俺!?言葉の暴力だよ!訴えるよ!警察に通報するよ!?」


「あーすまねぇ。俺の職業、一応警察なんだわ」


「うーわもう話さない!俺怒った!許さないからな!」


大声でそう叫び、あっかんべーをして暇そうにしている紫苑ちゃんの元へ逃げると、後ろからさも可笑しそうな笑い声が聞こえてきた。


その笑い声を聞いて、彼に背を向ける俺の顔もほころぶ。


何だかんだ言って、琥珀と俺の関係はこれからも変わらなさそうだ。
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