LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~

夕べ、あの後、私は永倉副社長に車で送って貰った。


「ほら、俺お酒飲んでるから。
みー君、文乃ちゃんの事自宅迄送ってあげて。
奥さんになるんだし」


岡崎社長にそう言われて。


永倉副社長の車は、シルバーのベンツの四駆で、とてもカッコいい車だったのだけど。


それを見て、はしゃぐ事も出来ないくらいに、
私と永倉副社長との間の空気は重い。


帰りの道中のその車内も、自宅のマンションの場所を訊かれただけで、会話なんてものは特になくて。



「着いた」


「はい。ありがとうございます」



車が停止し、私は一応この人にお礼を告げた。


帰りの車内ずっと気まずくて、それなら自腹でもタクシーで帰れば良かった、と、後悔した。



「この車、ちょっと高さあるから、
降りる時気を付けて」


「え?」


思いがけないその言葉に、永倉副社長を見るけど、
私の方を見ていないので、それは横顔で。


その横顔を見ていたら、問い掛けたくなる。


私とこのまま結婚していいのか?と。


でも、訊けないな。


私はこんな人大嫌いだし、結婚したくないと思っているのに、
今のこの重い雰囲気で、逆に同じような事言われたら傷付きそうだから。



「おやすみなさい」


そう言って、車から降りた。

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