裸足のシンデレラは御曹司を待っている
すると、強い力でグイッと腕をつかまれ、水面から顔が出た。慌てて空気を肺に送り込む。
ケホッゲホッ。

「大丈夫か?」

気が付けば、直哉に抱き留められている。
プールに飛び込んで助けてくれたんだ。

「柏木さん……ありがとうございます」

「上がってこないから驚いたよ」

「足の着くプールなのに慌てちゃいました。熱いからプール入りたいなぁ、なんて思っていたら落ちちゃったんです」

「いや、大丈夫ならいいんだ。でも濡れてしまったな」

「私のせいで柏木さんまで濡れてしまいましたね。お風呂洗ったので、入ってください」

「いや、俺は、そもそも水着だから安里さんのほうが……」

と言われて、はたと気づいた。水中でスカートがめくりあがっているし、白のブラウスが濡れてスケスケでブラのレースがまる見え。
水着なら平気なのに下着だと思うと、とっても恥ずかしい。

ましてや上半身裸の直哉に立てだっこをされて、彼の首に回した腕が素肌に触れている。
おまけに私は下着まで濡れていて、どうしたって意識してしまう。

「あ、あの……」

直哉の切れ長の瞳、綺麗な虹彩の中に私が映っている。
絡んだ視線が離せない。

海から熱い風が吹き、緑の木々が揺れざわめいていた。

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