裸足のシンデレラは御曹司を待っている
8
車は名護市内を抜けて許田に差し掛かった。
5年前と同じルート、でも途中の道の駅は新しくなり、道路も以前より整備されている。
同じ道だけど同じではない景色がそこにはあった。複雑な感情のまま一言もしゃべらずに外の景色を眺めていた。

金武ICから一般道へ10分ほど走り、鍾乳洞に到着した。緑豊かで静かな金武観音寺の境内、そこは5年と同じ景色が出迎えてくれる。
その一角にあるゴツゴツと岩の割れ目をくぐり抜け、狭い階段に差し掛かった。
足に怪我の後遺症がある直哉が落ちてしまっては?と思い声を掛ける。

「私、先に降ります」

「いや、俺が先に降りるよ。万が一足を滑らせたら安里さんまで巻き込まれてしまうだろ?」

この人何言っているんだろう? 踏ん張りの利かない足で落ちる危険があるって、わかっているのになんでここに来たのか。
何せ、熟成期間が来た時には、直接受け取りの方法以外に配送で自宅に送ってもらえるサービスがあるのに意味がわからない。

「万が一落ちたら救急車を呼んでくれればいいから」

直哉が、そんな冗談とも本気ともつかない事を言いながら先に階段を降り始めた。
その背中に慌てて声を掛ける。

「とりあえず無事に降りてください」

もう、直哉が何を思って何を考えているのか……さっぱりわからない。
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