裸足のシンデレラは御曹司を待っている
「あの、すみません。息子が保育所で怪我したみたいなので、直ぐに行かなくてはいけないんです。申し訳ございませんが、今日のご案内キャンセルさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「怪我をしたなんて、それは大変だ。急いで行ってあげないと」

「はい、すみません。ありがとうございます」

「……大丈夫? 俺でよければ一緒に行こうか?」

現時点では、お客様である直哉。観光案内も出来ないのにその上、従業員の私用に付き合わせる事なんて出来ない。

「いえ、一人で大丈夫です。お気遣いありがとうございます。ご案内できず申し訳ございません。それでは、柏木様。良い一日をお過ごしください」

「俺の事は、気にしなくていいから、早く行ってあげて」
直哉の瞳が切なげに見える。

「ありがとうございます。行ってきます」

それだけを言い残し、慌てて真哉のもとに向かうために別邸の玄関から飛び出す。
自宅前に停めてある、車に飛び乗りエンジンを掛けた。

車が走り出すと気持ちが落ち着いてきて、ふと直哉の事を思い出す。

電話が鳴った時に、言いかけた言葉の続きって何だったんだろう……。

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