それでも僕は、君を愛す
「茉莉母、今日からヘルパーさんが来てくれるよ?」
「ヘルパーさんですか?」

知り合いから、ヘルパーと一緒に家事を行うケアがあると教えてもらった為、おもいきって頼んでみることにしたのだ。

「うん。ヘルパーさんと一緒に洗濯物干しと、料理をしてみない?」
「お兄さんは?」
「俺は仕事があるから、俺の仕事中だけお願いしようかと思ってるんだ。
大丈夫。今日は俺も一緒にいるから」

「はい、わかりました」


「━━━━━━迫下さん、初めまして。
◯◯ヘルパーステーションの元山(もとやま)です。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします。
茉莉母、挨拶して?」
「よろしくお願いします」
無表情のまま、小さく頭を下げた茉莉母。

緊張の為か、終始俺の服をギュッと握っていた。

「迫下さん、一緒に洗濯物干しませんか?
タオルとかだけでも」
「………」
俺の服を握ったまま、離れない。

「茉莉母、洗濯物だって。
元山さんとやってみな?」
「………」
「茉莉母!」

「あ!旦那さん!大丈夫です。出きる時で構いません。ゆっくり、進んでいきましょう。
茉莉母さん、出きる時でいいので大丈夫ですよ」

「━━━━━では、茉莉母さん。
また来ますね!その時、一緒に茉莉母さんの好きな物作りましょう!」
そう言って帰っていった元山さん。


“旦那さん、まずはヘルパーに慣れることからですから、無理にしなくて大丈夫です。
ゆっくり奥様のペースでしていきましょう”

元山さんが中心になりケアに入ってくれ、茉莉母は少しずつ家事をするようになった。

まだ料理は無理だが、洗濯は自分でできるようになったのだ。



そしてまた、一年経ち━━━━━

「奥様、少し表情が柔らかくなりましたね!」
仕事から帰ると、まだケア中で元山さんがいた。

ちょうど帰る前だったらしく、少し話をした。

「そうですか?でもまだ、笑わなくて……」
「うーん。でも、微笑む時ありますよ?
旦那さんの話をすると、ほんの少しですが微笑みますよ!」
「そうですか?良かった」

「今日は、一緒にホットケーキ作ったんですよ!
奥様にひっくり返してもらいました!
もう少し慣れたら、奥様にメインにお料理してもらおうかと思ってます。
もちろん包丁はまだ難しいですが、味付けとか!」

「はい。よろしくお願いします!」

「ご夫婦で食べてくださいね!」
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