社長の渇愛
「心花…もう一回……」
「亜…伊…も……だめ…身体が…もた…な……」

マンションに帰り着き、ベッドで抱き合っている二人。
何度も果てて、それでも亜伊は心花に求めていた。

「心花…俺を見て?」
「ん…」

「心花…可愛い……」
繋がったまま、心花の目元にキスをする。
「ん…」
「初めて逢った時も思ったんだけど……」
「え?」

「心花って、涙…綺麗だな……」
涙の溜まった目尻をペロッと舐めた。

「え……」
「俺、その涙に一目惚れしたんだよ?」
「そう…なんですか?」

「月に照らされてて、スゲー綺麗だった……」

「そんな///恥ずかしい…
それをいうなら、亜伊はカッコ良すぎです!」
「そう?」
「だって!会社で凄いんですよ!?
亜伊が外勤から帰ってくる前、女性社員さんがソワソワしてるんだから!
で、帰ってくると目がハートマークだし!」

「フフ…ヤキモチ妬いてくれんの?」

「え…あ、いや…その……ご、ごめんなさい…」
「ううん!俺も、究極の嫉妬中だから!」
「へ?」
「予感がするんだ」
「え?」

「きっとこれから俺は、心花の周りの全てに嫉妬する」

「亜伊?」
「だからお願い……」

「んんっ━━━━!!!?」
ググッと更に奥に、亜伊が入ってくる。
心花の眉間にシワが寄る。

「お願い、心花…
俺を不安にさせないで?」
「んぁぁ……亜…」
ベッドのスプリングの音が響く。

「俺だけを見て、俺だけを感じて、もっと俺を欲してよ!」
「亜…伊…」

「心花じゃないと、俺は満たされない……!」

亜伊の苦しい声と共に、夜が明けていった。



朝になり、目を覚ました亜伊。
腕の中の心花を見て、自然と笑顔になる。
肘枕で自分の身体を支え、心花を見つめた。

心花の前髪を優しく払う。
そしてゆっくり、心花の身体に合わせて手を滑らせた。

首、肩、鎖骨、胸、みぞおち、腹……
全てに夜中に亜伊がつけたキスマークがついている。

「フフ…」
愛しくてしかたがない心花が、今手の中にいる。
今日から、もう…放れなくて済む。
そう思うだけで、狂喜に震える。

しばらく見つめていると、スマホのバイブが震えた。
タップして確認する。

『ストーカー男、消去完了!』
黒い蝶のアイコンの相手からのメッセージ。

フフ…と笑って、『了解!』と送った。
「最期にいい仕事してくれたよ!ありがとう!」
と呟いた。

『あと、問題発生』
『至急会いたい』
『事務所で待ってる』
とメッセージが立て続けに入ってきた。

「あ、御笠?
黒滝(くろたき)が会いたがってる。迎えに来て」
『かしこまりました』

亜伊は、心花の額に軽くキスをして起こさないようにゆっくりベッドを降りた。
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