社長の渇愛

｢黒滝さん？｣
｢えーと、確か…受付で働いてるんだよね？｣

｢あ、は、はい…｣
思わず、黒滝から目をそらす。
｢ん？なぁに？｣
｢あ…いえ……｣
(こ、怖いよ……)

黒滝の後ろに控えている部下達が、恐ろしくて黒滝を見れない心花。

｢竪羽、部下の方が怖いのよ、きっと｣

そこに如月が口を挟んできた。

｢え？如月…先輩？
竪羽…って…｣
｢私の彼氏なの、これ｣

｢━━━━━━━！！！？
えーーー！！！？｣
思わず、大きな声が出た心花。

周りが注目する。
｢真田ちゃん！そんな驚くとこ？｣
｢ボスカノ、やっぱ知らなかったんだ？
僕と、耶夏(やか)(如月の名前)のこと｣

｢はい。彼氏さんがいることは知ってましたが、まさか黒滝さんだったなんて……
あ！黒滝さん！｣
｢ん？なぁに？｣

｢如月先輩との時間をもっと増やしてあげてください！｣

｢え？｣
｢先輩、寂しい想いをしてます。
黒滝さんがお忙しいのは、十分わかっています。
でも、もう少し先輩との時間を……｣

｢ちょっ…真田ちゃん！｣
｢だ、だって……先輩、凄く寂しそうだし……｣
｢真田ちゃ……｣

｢耶夏｣
｢え━━━━━｣
如月は、黒滝に抱き締められていた。

｢……/////｣
心花はそんな二人を見て、興奮したように目を輝かせていた。
そしてゆっくりその場を離れた。

｢フフ…先輩、良かった……！｣
そう呟き、料理が並んでいるテーブルに移動した。

｢おっ！ローストビーフだ…美味しそう……｣

｢真田さん｣
｢え？あ、秘書課の皆さん｣

｢ねぇ…貴女、どうやって社長に取り入ったの？｣

｢え？｣
｢あんたみたいな平凡な女が社長の彼女！？
あり得ないんだけど？｣
｢ですよね…｣
｢は？｣
｢逆なら、私もそう思うから｣

｢だったら、別れてよ！！！｣

｢それはできません！！
すみません！！｣
心花は、秘書達に頭を下げた。

｢なっ…！！！？｣

━━━━━━━━━！！！！？
秘書の一人が、持っていたワインを心花にぶっかけた。

｢ちょっ…！！？石脇(いしわき)さん！いくらなんでもやり過ぎ！！｣
｢だって、この女が！！！｣

｢大丈夫です。亜伊とお付き合いするんだから、覚悟はできてます！｣
心花が石脇を見据えた。

その真っ直ぐな瞳に、石脇の怒りが更に増す。
思わず石脇は、手を上げた。

ぶたれる━━━━━
心花は目をギュッと、強く瞑った。

パシッ━━━━━━！！！？