仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。

 力ない一周り以上小さな手。十歳の小さな手は一生懸命に生きている。なかなか目を覚まさない桃果の小さな手を握り続けた。
 玲司も仕事がまだあるだろうに「家族のことが優先だからね」といってまだ穂乃果の肩をそっと手を添えてくれている。


「んん……」


 小さな高い声。


「桃果!? 桃果! よかった……」


 ゆっくりと目を開いた桃果はまだ意識がはっきりとしていないのか天井を眺めている。ナースコールを押し桃果が目を覚ましたことを看護師に伝え、桃果の手を握り直した。


「桃果、お姉ちゃんだよ! 桃果!」
「お、姉ちゃん……」
「桃果、よく頑張ったね。もう大丈夫だよ」


 上を向いていた視線がゆっくりと横に移動し桃果の瞳に穂乃果と玲司の姿が映る。


「あ、玲司さんも来てくれたんだぁ……」
「桃果ちゃん、久しぶりだね」


 また桃果は視線を天井に戻し瞳の端から一筋の涙を流した。


「桃果……?」
「あ〜、ももかまた死にかけちゃったんだぁ。もう死んじゃうのかな」


 蚊がないているようなか細い声。


「なんてこと言うの! そんなことあるはずないいでしょう!!!」


 思わず大きな声が出てしまった。なんども桃果の弱音は聞いてきたがその都度笑顔で励ましてきたが今日はお互い感情が揺らいでいるのか冷静に聞いてあげられない。

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