仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。


「お姉ちゃん、仕事は大丈夫なの?」
「今日は半休もらってるからね。このあと仕事に戻るよ」


 玲司の秘書、原口の秘書補佐を初めて二週間。だいぶ仕事も覚えてきた。社員からも社長の妻だからと特別に対応されたりもせず社員と同じような扱いを受けている。原口いわく亡くなった玲司のお父さんの奥さんも同じように社長夫人だったが穂乃果と同じように社員として働いていたらしい。その前例があったからこそ穂乃果は特別扱いされることなく、働きやすいのだろう。すごく信頼関係の深いというか、いい会社だと穂乃果は働いてみてそう感じた。なのにどうして……なんて考えてももうどうにもならないことは分かっている。玲司は非の打ち所がなく弱みなんて無さそうだから。


「お姉ちゃん、外出許可がいつかでたらお父さんとお母さんのお墓参りに行きたいな」
「そうだね。一緒に行こう。じゃあ桃果、また来るからね」
「うん、ばいばい」


 笑顔で手をふる桃果に手を振り返して病院を出た。
 玲司の言いつけどおりタクシーで会社まで向かう。もったいないなぁと思いつつも玲司のカードで支払いを済ませ会社へ戻った。



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