仕方なく結婚したはずなのに貴方を愛してしまったので離婚しようと思います。


「でも今回のことで言い詰めることができるから、きっともうあの男の事は気にしなくて大丈夫だよ。うちの優秀な顧問弁護士にお願いするからね。でも、油断大敵だからもう少しの間なるべく一人で出歩かないこと。こんなに可愛い人が一人で歩いて、変な男どもに話しかけられても困るからね」


 頭をスルリと撫でられ、顔がかぁっと熱くなる。今まで可愛いだのなんだのと言われてもなにも感じなかったのに、玲司を好きだと自覚してしまってからは言葉の破壊力が脳を破壊する勢だ。


「な、なにからなにまですいません。もとわといえば私がしっかりと林田さんを断っていればこんな事にならなかったのかもしれないんですもんね、ごめんなさい」


 もっと自分がはっきりと断っていればこんなことにはならなかったはずだ。でも、どうして玲司があの場所に現れたのだろう。今日は仕事のはずだ。大事な会議があると朝言っていた。


「あの、どうして私があそこにいると分かったんですか?」
「あぁ、西片さんからラインが来ていたんだよ。穂乃果が工場に一人で来たって。だから慌てて会社を飛び出してきたよ。今ごろ原口がスケジュール管理でひぃひぃ言っているかもしれないな」


 ははっと笑う玲司だが穂乃果には全く笑えなかった。自分のせいで玲司は仕事を投げ出して、原口はその処理に追われていると考えたら……


「れ、玲司さん! 今直ぐ会社に戻ってください! 私はもう大丈夫ですから!」
「帰らないよ」


 ぞくりと身体の細胞が反応してしまうような力強く、真剣な声。

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