冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる
隠し切れぬ思いの未来



「つゆり、千隼さんとお付き合いしてるって、本当なの?」

 離れの座敷で、天音とふたりきり、向かい合っていた。

 惣一郎さんとすみれが恋人同士で、すでに二人の間に子どもがいることや、颯太がすみれのために奔走し、私に婚約解消を迫っていたことが明るみになってしまった。

 思いもよらない出来事が立て続けに起き、天音は怒りを隠し切れないでいた。

「それは……」
「それは、なんです?」

 私は黙り込む。

 どうして、千隼さんはあんな嘘をついたのだろう。もっと、体裁のいい言い訳は見つけられたはずだ。

 苛立つように指先を動かす天音にたえきれず、のどから絞り出すように声を発した。

「……本当ではありません」
「本当ではない? じゃあ、毎夜毎夜、ふたりでこそこそ何をやっていたの」

 天音はわかってるはずだ。だけど、それを口にはしない。私も、言えない。

「……何も。何もしていません」
「何もないなんて、そんな、子どもだましにもならない嘘、誰が信じますか。つゆり、これは裏切りですよ。西園寺さんのお耳に入れば、どのように思われるかわかっているんですかっ。……本当に、困った話ですよ」
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