翠も甘いも噛み分けて
彼氏
 幸成と成り行きで付き合うことになった翠は、戸惑いを隠せずモヤモヤしたまま自宅に帰宅した。高校を卒業してから十年間、全く音沙汰もなく、同窓会にも幸成は顔を出したことがない。そのため、こちらに帰ってお店を開業するまで誰一人として現在の連絡先を知らなかった。
 結婚式場での再会も、新郎である幸成の先輩がダメ元で実家に招待状を発送したものだ。独立開業のために、こちらに帰省していなかったら、きっと会うこともなかっただろう。

(高橋くんは、なんでこんなに協力してくれるんだろう。高校時代からスイーツ食べさせてくれるし、今だって毎日スイーツ食べさせてくれるし、仮とはいえ彼氏役を買って出てくれるし……)

 食事を済ませると風呂に入り、部屋に戻るとベッドに横たわりながら、つい最近起こった幸成とのことを考えていた。
 幸成に甘やかされて翠にメリットはあっても、幸成にはなに一つメリットはない。それなのに、翠に救いの手を差し伸べてくれるのはなぜ……

 十年振りの再会で、ときめかなかったと言えば嘘になる。心身共に大人の男性を感じさせる幸成は、幸成パティシエの肩書きがなくとも充分魅力的だった。
 あの頃とは違って身体も逞しく、でもぶっきらぼうでもさりげない優しさは相変わらずで……
 翠がいくら考えたところで答えなんて思い浮かばない。

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