復讐の果て ~エリート外科医は最愛の元妻と娘をあきらめない~
 啓介さんは、救急のフォローに入るようにしたらしく、お昼の帰宅ができない日が増えてきたけれど、それでも以前ほどには家を空けない。オペ以外の事務作業を分担したというのだから、理事長の席にも慣れてきたのだろう。

 私たちはまだ手探り状態の夫婦だ。

 できてしまった溝を気づいたところから埋めて直している。今どれくらいまで修復できたのか正直わからない。

「乃愛、さあ、お庭でお散歩しようか」

 乃愛を抱いたまま庭に出る。

「ほら、お花だよ綺麗だね」

 色とりどりの花を乃愛に見せながら、この子のおかげなんだろうなと思う。

 啓介さんがやり直しに積極的になったのも、私がそれほど悩まずに決意できたのも乃愛がいたからだ。

 乃愛がいなければ、そう簡単に歩み寄れなかったと思うから。

 今日は啓介さんと入れ替わるように、母が長野から出てくる。

 啓介さんとやり直すと報告すると、母は戻ってくるのをやめた。

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