天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 鈴本小鶴が原因だと、私も母も啓介さんから聞いている。

「以来女性不信なのか、三十代半ばだというのにまったく結婚の話もないし。島津の家はどうも結婚相手としては評判がよくないわ」

 啓介さんが言った『島津家の闇』という言葉を思い出した。

 それにしても、人の口には戸が立てられないと言うが、噂というのは恐ろしいと思う。

 他人からこんなふうに聞かされるのは私としてはいい気はしないが、彼女にしてみれば私が離婚した相手を悪くいうのは、私たちを庇っているのかもしれないし。

 複雑な思いに揺れていると「ねえねえ莉子さん」と声をかけられた。

「はい?」

「どう、そろそろ再婚考えてみない?」

 え? 突然で驚いた。

「ちょうどいい人がいるのよ」

「あ、あはは」

 笑ってごまかすしかない。

「今はまだ副理事長の仕事に頭がいっぱいで、すみません」

「そう。乃愛ちゃんが小さいうちの方が、新しいパパに懐くだろうし。その気になったらいつでも言ってね。候補者はたくさんいるから」

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