復讐の果て ~エリート外科医は最愛の元妻と娘をあきらめない~

 ピピッと目覚まし音が鳴る。

 覚醒するにつれ、微かに窓を打つ雨の音が聞こえてきた。

 今日は雨か。もう七月の中旬になんだもの、早く梅雨明けしてほしいな。

 ぼんやり考えつつ、重い瞼を上げた。

 目に入るのは広いベッドの白いシーツで、いるはずの啓介さんがいない代わりに、ほのかに爽やかなの香りがした。

 啓介さんが使っているローションの香りだ。

 耳を澄ますとバスルームから物音がする。彼はシャワーを浴びているのだろう。

 ゆっくりとベッドから降りて、ガウンを羽織る。

 啓介さんが出てきたら、私もシャワーを浴びようか。

 私たちは新婚ひと月の、湯気が立つようなほやほやカップルだ。
 夕べも啓介さんはたっぷりと愛情を注いでくれた。

 結婚するまで知らなかったけれど、心の満足と体の疲れはセットらしい。

 体も頭も重たくて仕方がない。

「ふぁ……」
 大きく伸びして、寝室を出る。


 私たちの縁談はスムーズみ進み六月に私はtoAを退職した。

 簡単な式を挙げて結婚し、私は今、夫に恋をしている。

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