復讐の果て ~エリート外科医は最愛の元妻と娘をあきらめない~
 事件を起こした後は後悔の念に苛まれ、莉子と乃愛には申し訳ないことをしたと、電話口で泣いてばかりいたが、それも今は乗り越えたようで、付き添ってくれている叔母の話によれば、最近は散歩をしたり花を生けたりと、穏やかに過ごしていると。

 小鶴も結婚生活は順調のようで心配ない。

 莉子の母は、俺の説明を聞くと、大きく息を吐いて『啓介さんを信じるわ』と言ってくれた。

『あなたは完璧なようで生き方が不器用なのね。逆に莉子はああ見えてもしっかりしてるから、ちょうどいいと思うわよ』

 莉子さえ受け入れるなら応援すると言ってくれた。

 お見合いの場所、レストランの予約時間まで教えてくれたのだ。

 生き方が不器用か……。

 兄も同じことを言われると言っていたから、これはもう父から受け継いだ遺伝子的なものなんだろう。

 気をつけたいとは思うが、なにをどうするか俺にはよくわからない。

 それでも、なにをすべきかはわかる。


 ホテルのラウンジで、目の前にいる莉子をジッと見た。

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