天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 ルームサービスを三人で食べている途中から、乃愛はコクリコクリと船を漕ぎ始めた。

「パパと一緒のお風呂が楽しかったのね」

 キッズアメニティの中に、お風呂で遊べるオモチャがあった。本当なら莉子と三人で入りたかったが、いきなりそこまでは望めない。

 そっと抱き上げベッドに乃愛を寝かせる。

 莉子とふたり、しばしそのまま乃愛の寝顔を見つめた。

 時間はまだ夜の八時。大人の時間はたっぷりある。

 テーブルの上はディナーの皿は片付けられて、代わりにワインとつまみのセットが並んでいる。それらを窓際のソファーの前にあるテーブルに移動して莉子を呼ぶ。

「さあ、夜景を見ながらワインを飲もう」

 ガウン姿の莉子は、はにかんだ笑みを浮かべながらうなずいた。

 歩いてきて座る前に、彼女は外を見下ろす。

「こんなふうにリラックスをして夜景を見るのは初めてよ」

 俺たちは見合い結婚で、結婚後も俺が仕事に追われていたためにろくにデートもできなかった。

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