妖の街で出会ったのは狐の少年でした

23話 過去

「カズハ様、この後いいですか?」
「え?うん」
私たちは、そのあと列車の中で一言も交わすことなく宿に戻った。
ロクは私の部屋で、向き合って語り出す。
「以前、チヨが俺のことを異端児と言ったことを覚えていますか?」
「うん、覚えてるよ。」
「その言葉通り、俺は異端児で、人間でも生粋の妖でもないんです」
「きっすい?」
「まじりけが全くない、という意味です。・・・俺は元は人間でした。」
そんなに驚きはしなかった。心の中でそうじゃないかと勘づいていたから。
「俺は人間だった頃、孤児だったんです。母親は出産に体が耐えられず、俺の顔を見る前に死んだと父親から聞かされました。しかし10になった頃父親は病気で他界しました。
それからは親戚をたらい回しにされ、 俺に関心がなく夜中に外を出歩いても咎められることはありませんでした。素行が良くないのが面倒になってなのか施設に行かせると聞かされたのは施設に行く前日でした。」
「そんな、急に・・」
「別に悲しくはありませんでした。
いつものように夜中に出歩いていると俺は人に紛れた妖に攫われて、
売り物とされました。
そこで俺はナグモ様と出会いました。
売値の数倍の値段で俺を買ったんです。
そしてこの街に来て右も左もわからない俺をここで働く代わりに衣食住を約束してくれたんです。
名前を聞かれてもまともに呼ばれたことがなかったので答えることができないでいると、ロクという名前をナグモ様がくれたんです」
「そう、だったんだ。
でも、どうして妖になろうと思ったの?
人間として生きることをできたんじゃないの?」
「妖は人間より長い時間を生きることができるんです。俺は、出来るだけ長く生きたいんです。長く生きている方がその分、ナグモ様の力になれる、恩返しができると思ったんです。俺は無理を承知でナグモ様に頼みました。ナグモ様はたくさん悩んで、俺を妖にすると決めたんです。」
声をかけることができなかった。何を言っても都合がいいように聞こえてしまうんじゃないかって思って
「俺を受け入れてくれる者は少なかったです。心ない言葉を投げられることもありました。覚悟していたはずなのに実際は耐えられなくなり俺は殻に閉じこもるようにこの仮面をつけるようになったんです。」 
"私でも、嫌なの?"
そう言おうとして口を開いたが我慢した。言ってしまったら、ロクを傷つけるような気がして
「カズハ様」
「な、なに?」
いきなり呼ばれて驚いた。
「あなたがチヨやクラスの子達に言ったこと覚えてますか?」
「簡単に変えることのできない理由で
って言ったやつ?」
「そうです。俺、その言葉のおかげで救われたんです。クラスの子達と仲良くなりたかった。でも親に諭されて、誰も寄ってくれなくて、寄ろうとしても避けられて、諦めていたんです。カズハ様のお陰で打ち解けることができた。少しずつですか世間の俺に対する考え方も変わっていた。カズハ様のおかげなんです。
ありがとうございます。」
「そんな私のおかげだなんて・・・」
「俺、もう殻に閉じこもるのはやめようと思うんです。」
「え?」
ロクはそういうと、仮面を外した。
ミステリアスで、でも幼さもある
そんな顔が仮面の下にあった。



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