妖の街で出会ったのは狐の少年でした

3話 少年

目が覚めて時計を見ると、11時だった。
テーブルを見ると、お膳があり、懐石鍋と、別皿にうどんと漬物の小鉢、お椀があった。とりあえず制服に着替えて、髪を梳き、顔を洗ってからテーブルに着く。
メモが置いてあり、
「カズハへ
おなかがすいたらこれをたべてね。
ひはたべおわったときにきえるから
きにしないで。  ナグモ」
蓋を開けると、すごくいい匂いがする、
こちらの食文化は、向こうとほとんど変わらないようで安心した。
お椀に汁を入れ、うどんを食べる。
体がじんわりと温まるのがわかる。汁が
少々油が多いのでお漬物を食べる回数が増える。こういうことを見越して、お漬物があるのかもしれない。汁を完飲した頃、襖が空いて仮面をつけた、私と同い年くらいの少年が入ってきた。少年は
「お膳をお下げします。」
と言い、出て行った。
唖然としていると戻ってきた。
「はじめまして。使いのロクと申します。よろしくお願いいたします」
「あ、あの使いって・・・?」
そういうと少年ロクは、驚いたような
反応をするが、すぐにため息をついた。
「カズハ様が、驚いていたので、まさかとは思いましたが・・・」
とつぶやいていたが、すぐに私に向き直った。改めて見ると、巫女服のようなものに、小豆色の短パン姿。裾に桜が描かれている羽織を身につけていた。頭にふわふわの耳があり、腰のあたりからしっぽが生えていてゆらゆら揺れている。仮面で顔が全くわからない。
「まずカズハ様は、ナグモ様と契約をしました。ナグモ様はこの宿屋の経営者兼雇い主です。あなたの手の甲には、
雇い主の名と労働場所、契約成立証明の3つが記載されています。成立証明と言うと、見ることができますが、日常的に使うことはほとんどありません。
ここからが本題です。この宿屋の従業者には必ず1人、使いという者が即きます。従者と言った方が分かりやすいでしょうか。食膳の上げ下げや布団の準備など、従業者、主が滞ることなく仕事ができるように補佐をすること、可能な限り主の願いを聞くことが我々、使いの仕事です。」
同い年に見えてたがロクは私よりもしっかりしていた。
「仕事と私事は分けていますので、そこはご理解願います。」 
そう言ってロクは頭を下げ、出て行ってしまった。従業者の仕事が休みだと使いも休みなのかと今理解した。
とりあえず観光でもしようと思い、部屋の外に出る。一度しか来ていないので
右も左もわからずウロウロするしかなかった。すると、ロクが現れ、
「なにをしているのですか?」
「あの、宿屋の外に出てみたいな、と」
「ついてきてください。」
言われるままロクの後をついていく。
「観光するつもりですか?」
「え、うん。」
「お供しますよ。」
「いいの?」
「カズハ様が帰れなくなっては、こちらの責任が問われるので」
「なんで、観光するってわかったの?」
ロクはこちらに顔を向けて言った。
「使いですから。」
< 3 / 100 >

この作品をシェア

pagetop