妖の街で出会ったのは狐の少年でした

69話 芽生え

「はぁ」
「珍しいな。カケルがため息つくなんて」
ため息つくとミチルが顔を出す。
「ミチル。俺、ナツキさんが好きかもしれない」
ミチルが一瞬固まって答えた
「俺は好きだよ。ナツキのこと。」
その発言に今度は俺が固まってしまった「え、」
「あ、言っとくけど俺の場合は友愛」
間髪いれずにミチルは答えた
「そっか」
安心してしまった時点で自覚した
「俺は友愛じゃない」
「本気?」
「本気だ」
誰にも渡したくない。心の底からそう思った
「渡したくないかぁ」
「え、声でてた?」
「思いっきり」
「んで、いつから」
「え?」
「いつからナツキのことが好きなんだ?」
俺はしどろもどろになりながらも答える
「えっと、自覚したのはほんとつい最近で」
「どこが好きになったの?」
「どこ・・・?」
「え、わかんないの」
ミチルは呆れながらに答えた
「なんか、好きだなって思って。
いざどこって言われたら困る」
「まぁそれぞれだしな」
ミチルは手を組んで言った。
「ナツキさんが街に行くって言った時、
すごく嬉しそうだった。
友達に会うんだから嬉しいのは分かる。
でもジュンっていう人にも会うのかと思うと、なんかモヤっとした。」
「そっか・・・まぁ応援するよ。」
「ありがとう、ミチル」
その日の夜にナツキさんは帰ってきた。

「ただいま、2人とも」
私が家に戻るとミチルとカケルが家の前で
待っていた。
「お帰り、ナツキ」
「お帰り、ナツキさん」
奥からコンが出てきたので頭を撫でながら
2人に聞く
「私がいなかった三日の間になにか変わったことあった?」
「いや、特に」
ミチルが答えた。
「何もなかった」
今度はカケルだ。
「母さんは中にいるの?」
2人は黙って頷いた。ほんとに息合ってるな
私は2人の間を通り家に入る。
「ただいま、母さん」
「おかえり、ナツキ。楽しかった?」
「うん、楽しかったよ。」
「そっか。よかった」
私たちは夕食を食べ、しばらく各々のやりたいことをして、眠りについた。
次の日、私はカケルと木の実を取りに向かう
胡桃やどんぐりを拾い集める。
帰る時、ふと聞かれた

「ナツキさんは好きな人いるの?」
俺は何気なく聞いたつもりだ。
なのに、心臓の音が耳に直接聞こえるくらい
大きく聞こえる。
「私は、好きな人というか気になり始めた
人がいるんだ」
ナツキさんははにかみながら答えた。
俺は直感的にこう思った。彼だ、と
「そうなんだ。誰だかわからないけど
応援するよ」
苦し紛れの嘘を吐く
「まだ気がはやいよ」
ナツキさんは照れながらも嬉しそうに言い
ナツキさんは先を歩く。
俺の初恋はあっけなく終わりを告げた。

家に帰ってから俺はミチルに言った。
「そっか。」
ミチルはまだ一言そう言った
「気づいたのが遅かったし。」
「好きに気付くのに遅いとか早いとかないと思うけどな。言わないのか」
「正直悔しくいって気持ちもあるけど
ナツキさんの嬉しそうな顔をみたら成就することを願う気持ちもあるんだ。
ナツキさんの恋に俺の気持ちは邪魔になると思うから言わない」
ミチルは俺の答えに何も言わなかったが、
ふと思ったように
「ナツキの好きな人ってジュンって人だと
思うんだ」
「多分、俺もそう思う。」
ミチルは少し、いやだいぶ悪い顔になって
言った
「会ってみようよ」
「・・・え?」





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