妖の街で出会ったのは狐の少年でした

75話 大晦日

冬休みが始まり、毎日忙しなく働いて
疲れが溜まってきていた頃。
「カズハ様」
「ん、なに?」
お風呂あがりに布団の上で大の字に横になっていると、
「あ、いえ、なんでもありません。
すみません」
何か言い淀んでやめてしまった。
「そう?」
私は起き上がり布団にはいる。
ロクはスッとたちあがった
「それでは失礼します。
おやすみなさい」
「おやすみ、ロク」
部屋を閉める音がして、静かになる。

私が布団にはいるのを確認してからロクは
部屋を出ることが多くなった。
なんか気になってしまう。これも使いの仕事の一つなのだろうか。
良く言って束縛、悪く言って監視。
たまには1人の時間も欲しいな、なんて考えるのはおこがましいだろうか。
冬休みになる前日、ジュンから冬休み中は
猛勉強しないと行けないから遊びとかには
行けないと言われてしまった。上の学校に
行くのだから仕方ないのはわかってる。
今日の仕事終わりに部屋に戻る時、ナグモ
さんから、去年と同じように年明け前に休みは難しいけど、大晦日と三ヶ日は休みになったからそれで許してくれ、と言われた。
お正月、初詣やお節料理はあるのだろうか。
そんなことを考えながら眠りにつく。
次の日からは忙しい合間に隙を見つけては少しずつ宿題を進めることにした。
そしてやっと大晦日。
長く息を吐いて、私は着物を着てから
袴に手を伸ばす。
「なんだかんだ足を通すのは初めてだな」
呟いて、紐を少しきつく結ぶ。
(袴の着方はミズキさんにきいておいて
よかった)
「失礼します」
ノックされロクが入ってくる。
「どう?ロク」
裾を掴み軽くまわって見せた
「って言ってももう見てるけどね」
私は笑いながら言った。
ロクは微笑みを浮かべ似合ってますよ、
というのだろう。だが
「か、可愛いですよ。とても・・・
似合って・・・ます。」
口に手を添え、顔を赤くして答えた。
思ってた反応と違い、照れてしまう。
「え、あ、。ありがとう」
それから少しして思い出したように
「あ、朝食」
そう言ってロクはお膳を持ってきた。
朝食を食べる箸を止め、
「ねぇ、ロクこの街に初詣ってあるの?」
「初詣はありますけど、行きたいんですか?」
「あ、そういう訳じゃないんだけど・・」
本当は行きたかったけど、やめた。
なんだか仕事の一つだと思われながら行動するのは嫌だと思ってしまった。
(でも迷惑かな、こんなこと言って。
面倒くさいって、思われないかな。)
わがままだっていうのは分かってる。でも
「あのさ、ロク。」
「なんですか?」
きょとんとした顔で聞いてきた。
「今まで水族館とか、ナツキたちと遊びに
行った事って、ロクにとっては仕事の内
なの?」
ロクはフッと息を吐き
「確か仕事の内だと思い、行動していました。主を労るのも使いの仕事。あなたを看病したのも、仕事の他に意図はありませんでした。」
なんか、ショックだな
「でも誕生日をお祝いした事は仕事では
なく本心でした。これからはあなたとお出かけしたりすることを仕事だと思うことは
多分ありません。」
「そっか。嬉しいな、」
「カズハ様。」
「ん?」
「明日の早朝、俺の我儘に付き合ってくれませんか。」
「良いけど、早朝?何をするの?」
「初日の出、見ませんか?」
そう言っていたずら顔で小指をたてる。
私たちは小指を絡め約束した。
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