火の力を持つ国王様は愛も熱い



エマの身元引受け人の家がある街へ着く頃には朝方になっていた。

家の周辺に到着すると、エマの捜索隊が周囲に聞き込みをしている場に合流する。

「国王陛下!?お一人で戻られたのですか!?」

「あぁ、今戻った。伝令の馬を頼む」

「畏まりました。申し訳ございません、ご挨拶が遅れ…」

「構わない、それよりエマは身元引受け人の家にはいないのか?」

「念の為人が隠れる事の出来そうなクローゼットの中など全て確認しましたが、何処にもおらず…御婦人の話ではエマ自身の意思でこの国には戻らないと話していたようで…しつこく探し回るなら自由を与えない王室を訴えると」

「家へ案内しろ。俺が御婦人から直接話を聞く」

全く信用出来ない話だ。

仮に俺との婚約に納得していないとしてもエマが俺に黙って姿を消す事はありえない。

身元引受け人の家が見えてくると突然扉が勢い良く開き、婦人が叫びながら飛び出して来た。

「誰かッ!!誰かダズを助けてッ!」

俺は急いで婦人に駆け寄る。

「何があった!?」

駆け寄ると婦人は必死な表情で俺にしがみつく。

「御婦人!この方は国王陛下でおられる!手を離すんだ!」

「構わん!御婦人、状況を説明してくれ」

「地下がッ…朝になったら何故か地下が浸水していたんだよ!地下には私の息子が!ダズを助けてくださいぃ!」

「地下だと!?先日の捜査の時は地下なんてなかったでは無いか!」

すると、御婦人はパッと口に手を当てた。

「おい、急ぎ浸水している地下を調べるぞ」

御婦人に腕を掴まれ、止められるがそれを振りほどいて家の中へと向かった。

御婦人はすぐに周りにいた兵に取り押さえられる。

「国王陛下!こちらへ!床下が開いてます!」

1階の物置部屋棚がズレていてその下の床板が外れている。

中を覗き込むと床の下に続く空間があり、そこが完全に浸水している。

床と水面の間に少し隙間はあるようだが…

「なんだここは…ここに取り残されてるのか?とても人が居るようには…」

浸水している水に手をつけると氷水の様に冷たい。

雪国だから当然ではあるが…


バシャッ……


「ガハッ……助け……」

「誰かいるのか!?」


男の声が聞こえて一緒に覗き込んでいた兵士が水に入ろうとするがすぐに出てくる。


「冷たッ…」

「下がってろ、お前には無理だ。俺が入る」


俺はすぐにさっさと水の中へ入り、声のする方へと水面を進むと何かが浮いていてそこに誰かが掴まっている。

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