龍神さまのいるところ

第6話

「ここにね、それはそれは小さな祠があって、それが……。まぁ、昔の話しなんだが」

「……それって、この学校の出来る前の話じゃないすか? 50年以上前の話ですよね」

「え? そうだっけ?」

 普通、そんなことに興味ある? 

どうしてそんなことを知ってる? 

体が震えている。

それをこの人にバレないよう、隠すのに精一杯だ。

「学校の歴史とかに、なんでそんなに詳しいんですか?」

「まぁ、舞香に聞いてみるといいよ」

 ブルブル震えながら見上げる俺を、彼はじっと見つめている。

微かに微笑んだ。

「邪魔したね。もう行くよ」

 スラリとしたその姿が、完全に見えなくなるのを待っている。

それを確認してから、急いでスマホを取り出し、学校ホームページを開いた。

資料室にあった学校史のパネルが、そのまま載せられている。

その画像には確かに祠は写っているけど……。

そんなの、気にする? 

もしかしてこの人も、彼女の秘密をしっているのかな。

だとしたら『協力者』の一人?

「……。なんだよ、他にも仲間がいたんだ」

 そりゃそうだよな。

どうして自分だけが、特別だなんて思ったんだろう。

急に何もかもがバカらしくなって、芝生の上に寝転がる。

淡い空に消えそうな雲が浮かんでいて、それをカメラに収めた。

こうやってここに寝転がっていれば、いつか俺にも不思議なことが起こったりするのかな。

宇宙人が攻めてくる? 

魔法や超能力が使えて、ゾンビ倒せたりする?

「なにしてんの?」

 ふいに現れた舞香が、俺をのぞき込む。

スカートの中が見えそうで見えないのに、飛び起きた。

「な、なにも……、別に何も見えてないよ!」

「圭吾はここが好きだな」

 そう言って、池とフェンスの向こうの森を交互に見比べている。

「私も初めてここを見た時、よいなと思ったんだ」

 それだけを言って、くるりと背を向けた。

「……。なんの用?」

「用がないと、来てはいけないのか?」

 特になんの用もないことくらい、そりゃ知ってるさ。

俺に用のある奴なんて、そもそも滅多にいないし、あっても大概そんな時は、ロクなもんじゃない。

この演劇部の動画編集作業だってそうだ。

だけど、そんな理由でもなければ、きっと彼女と話すこともなかったんだろうな。

下からマジマジとのぞき込んでくるその全く遠慮のない物腰に、俺は若干どころか、だいぶ引いている。
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