龍神さまのいるところ

第10話

「お前、名前なんていうの」

 なんかヘンなものかと思ってたら、やっぱり悪い奴ではなさそうだ。

龍といえば悪いものでもないだろ。

腕を伸ばしたら、その手にガブリとかみつかれた。

「痛った!」

「気安く触れるでない!」

「何だよ、突然噛むなよ!」

「無礼者め、そこから動くな」

 そんなことを言われたって、どうしろってんだ。

噛まれた手を見る。

血は出てないし、甘噛みだ。

舞香はめちゃくちゃ驚いている。

「圭吾、本当に知ってたの?」

「う、うん……。池の上から降りてきて、すぐに取り憑くところを見ちゃった……」

 チビ龍と彼女は息を揃え、盛大にため息をつく。

「だから、そういうことはもっと早く言ってくんないと!」

「私も知らなかったのだ。仕方ないだろう」

「どうしてそんなにマヌケなの!」

「間抜けとはなんだ、舞香よりはるかにマシだ」

 一人と一匹はにらみ合っていたかと思うと、また同時にため息をつく。

「えぇっと……、いまはどういう状況?」

 三人はそれぞれに目を合わせた。

それを聞かないことには、俺だってどうしようもない。

夕闇に沈む公園で、またため息をつく。

彼女とチビ龍の出会いは知っている。

問題はそれ以降と、これからのことだ。

「あの池をね、作ったのはこの人なんだって」

「ヒト呼ばわりするな。お前たちとは生きている次元が違う」

 要約すると、宝玉を隠すために天界から地上に降り、地面に隠したのはいいんだけど、その後どこに行ったのか分からなくなったんだって。

「行方不明なのだ」

「なくしちゃったから、探してほしいんだって」

「それはいつごろ隠したの?」

「1,200年前」

 平然とそう言ってのけるチビ龍を俺は見つめた。

舞香もそれが当たり前のように突っ立っている。

「あぁ、そりゃ大変だな」

 なんだよそれ。

やっぱり関わるんじゃなかった。
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