龍神さまのいるところ
第14章

第1話

 翌日の天気は晴れ。

演劇部員は朝の7時に公会堂へ集合だったみたいだけど、俺たち写真部は8時に会場へ入った。

「リハーサルがあと10分で始まるから、よろしくな」

 当然だけど、今日は荒木さんがいる。

「私は他の準備があるから、ちょっと撮影準備の方、お願いしてていい?」

「もちろん」

 会場後方、中央部分にある機材ブースに入る。

カメラの電源を入れ、充電量を確認した。

空き容量も大丈夫だ。

舞台の幅に合わせて、映像の映り具合を調整する。

話し合った末、本番は舞香が中央全景カメラにはりつき、俺と山本が舞台下から撮影することになっていた。

 リハーサルが始まった。

細かい操作や設定、注意点を再確認する。

一緒に準備してきたんだから、そこは安心している。

開場時間を迎えた。

「圭吾。ちょっといいか」

 荒木さんに呼ばれた。

明るい客席に、誰かと手をつないで、会場通路を下りてくる。

「この子を頼む。どうしても上演が見たいって聞かないんだ」

「え?」

 ハクだ。

また小さな女の子の格好をしている。

「いいんですか?」

「あらぁ! ハクちゃん本当に来たんだ。いいよ。私が一緒に見てあげる」

 希先輩が手を伸ばした。

自分の目の前に差し出されたその手を、ハクはじっと見つめているだけで、動こうとはしない。

「なによ。やっぱり私のコト嫌いなワケ?」

「かわいーですね。妹さんですか?」

 何も知らない山本は、かっちりとした濃紺の制服を着込むハクを見下ろした。

ハクは山本を見上げたまま、つないでいた荒木さんの手をぎゅっと握り返す。

「人見知りでね。実はロクに話しも出来ないんだ」

「そうなんだ。荒木さんも大変ですね。さすがに舞台袖はちょっと無理だけど、客席なら……」

 そのハクの手が荒木さんを離れ、俺の手を掴んだ。

「はは。やっぱ圭吾がいいってさ。よろしく頼むよ」

 なんだそれ。

つーかそんな目でにらみ上げられても、俺は面倒見切れないぞ。
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