先生、恋愛を教えて。
でも、ほかの人が持っているお琴と比べると、どうしても負けを感じざるを得ないのだ。
別に高い楽器を持っているから勝負に勝つわけではないのは分かっているのだけれど……
でも、どうしても羨ましいと感じてしまう。
わたしも新しいお琴が欲しい。
お琴を続ければ続けるほど、その思いは強くなる。
でも、わたしは必死にその思いを封印してきた。
だって、わたしには自分にお金を使う余裕がなかったから。
「ねえ、先輩、わたしね。ずっと欲しかったものがあるの」
でも、今はその欲しかったものが手に入れられるかもしれない。
自分の手で――
「わたしね、新しいお琴が欲しい」
「そうか」
先輩はそれ以上何も言わなかった。
「今使ってるお琴があるだろ」とも言わなかった。
もしかしたら、先輩にはすべてバレていたのかもしれない。
わたしが中古のお琴じゃなくて、新しいわたしだけのお琴が欲しいと思っていたことを――