幼なじみじゃ、いられない。


「え、なに……どういうこと?葉月さん、だっけ?なんでまた大地くんと一緒にいるの?」


口調こそ柔らかい。

だけど、微かに震える声色からは、怒りに似た感情がひしひしと伝わってくる。


なんでまた一緒にいるの……って、そんなの知らない。


椎名さんと付き合って、デートして、キスしてたくせに、

何であたしにキスしたのか、全然わかんない。



「…………ないです」

「え?」

「別に何もないですっ!」


あたしはボソッと呟いた後、叫ぶように再び椎名さんに言うと、そのままふたりを横切って走り出した。



──そう、別に何もない。

大地くんはあたしを追ってきていないし、キスだってしていない。

何もしてない、何もない。


そうじゃなきゃ、そう思わないと、あたしは──……。
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