敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている

 九月に沖縄で匡くんと再会してから淡々とここまで来てしまったけれど、彼と夫婦になる実感がいまだに湧かない。

 まぁ夫婦といっても私たちの場合は変わった結婚の決め方をしているので、世間一般の夫婦の形とは違うのだけれど。

 匡くんは本当にこんな結婚をしてもいいのかな。

 私と結婚する理由は女性からの誘いを断るためと言っていたけれど、もしもこの先本気で好きになる女性が現れたらどうするんだろう。

 離婚のトラウマから恋愛をしないと決めている私とは違い、匡くんは好きな人が現れたら普通に恋愛をしたくなると思う。そうなったとき、私と結婚したことを後悔するかもしれない。

 もしも匡くんに別れて欲しいと言われたら離婚ということになるけれど……。

「そしたら私バツ二になっちゃう」

 心の声が思わず出てしまった。

 隣でクリスマスツリーを見ているカップルに聞こえたらしく、この人バツ二なの⁉とでも言いたげな視線を私に向けてくる。居心地の悪さを感じて、その場を離れようとした、そのとき――。


「ねぇ見てよ、和磨。クリスマスツリーめっちゃきれいだよ」


 どこからか甘ったるい女性の声が聞こえて、私の体がビクッと反応する。

 今、〝和磨〟って言った?

 恐る恐る振り返ると、一組のカップルが繋いだ手を絡ませながらクリスマスツリーを見上げている。

 ショートボブの可愛らし見た目の女性と、長めの前髪をセンター分けにして左耳の軟骨部分にピアスを付けている男性を見た瞬間、私はハッと息を呑んだ。

 元夫の和磨と、その不倫相手の女性――和磨の今の彼女だ。
< 90 / 156 >

この作品をシェア

pagetop