孤独と孤高にサヨナラを
「久しぶりね」


将棋盤の前に座りながら挨拶をする。
きっと甘っちょろいコイツのことだ。
笑顔で”よろしくお願いするよ”って言ってくるに違いない。
好戦的でも弱気な態度でもない。
ただただ笑顔で優しく挨拶をする。

コイツはそういう奴だ。


「私と対局するなんて余裕と思ってるんでしょうけど、あの時より格段に強くなってるわ。だからアンタにはもう二度と負けない」


私が強気にそう告げる。
そんな私の脚は震えていた。


「ちょっと聞いてるの?」


脚の震えを無視するように彼に声をかける。
すると彼は私に一度視線を向けるとすぐさま将棋盤を見た。

え?
無視された…?なんで?

困惑している私を他所に彼は将棋盤の前に座った。


「よろしくお願いします」


そう静かに告げた。
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