触れていいのは俺だけだから
お腹に今も鈍い痛みが走っている。殴られて気を失ったのだとすぐにわかったため、杏菜の心には恐怖があり、手足は小刻みに震えていた。

「ここに連れて来たのは、君の髪をカットするためだよ。君の髪に触れていいのは俺だけなのに、他の奴に髪を触らせるとか何やってんの?君のためならいつでも時間を作るのに、ひどい人だね」

ハサミを片手に持ち、凌がどんどん近付いてくる。杏菜は後ずさるも、すぐに壁に背中が触れた。凌が目の前に立っているため、もう逃げられない。

強く杏菜が目を閉じると、ジョキッと音が響く。目を開ければ凌が嬉しそうに微笑んでおり、その手には切られた髪が握られていた。それは今日、パーマを当ててもらった髪だ。

「うん、ショートも似合うね。これから整えてあげるから、ジッとしててね?」

狂気を含んだ笑みを向けられ、杏菜はただ大人しく彼のすることを受け入れるしかなくなってしまった。






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