八千代くんのものになるまで、15秒


まるで、女版、藤田瑛士。



「あのー、大丈夫?」
「へっ、あ!はい!大丈夫!八千代くんだよねっ」



呼んでくるね、とそう続けると、日向さんは安心したように顔を綻ばせた。

ミディアムヘアーの、活発そうな女の子。

今まで話したことはなかったけど、可愛いなぁ。



「八千代くん、」



黒板消しをクリーナーにかけていた八千代くんの名前を呼ぶ。

日向さんのことを伝えると、彼は「あぁ」と何かを思い出したかのようにそう言った。



「──ケガしたところ、大丈夫だった?」
「うん。梓希くんがすぐ保健室連れて行ってくれたし」



なんて、扉の前での2人の様子を教卓の前でぼーっと眺める。

日向さんのあどけない笑顔。
八千代くんの柔らかな表情。
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