八千代くんのものになるまで、15秒


謙虚なところも素敵だ、梓希くん。






「──ていうか、今思ったんだけどね?」
「なに?」

「梓希くんは私のこと下の名前で呼んでくれてないなって!」



本日最後の授業前の休み時間。

私の前の席に座ってスマホをいじっている梢に向かってそう言うと、「だから?」と、なんとも冷たい返事が。



「ちょっ、もう少し興味もって!」
「うーん……ぶっちゃけどうでもいいよね」
「ぶっちゃけすぎ!」



カメラ機能を使って前髪を整える梢。


「下の名前で呼んで欲しいならそう言えばいいじゃん。八千代ならあんたのお願いなんでも叶えてくれそうだけど」


うぐ、それは……そうなんだけど。



「いつも梓希くんのペースに巻き込まれてるから……私も梓希くんのこと振り回してみたい」
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