八千代くんのものになるまで、15秒




「う、嘘……休館日だなんて聞いてない……」



梅雨が明け、セミの鳴き声が響き渡る中。
"臨時休館"と書かれた看板を見てガクリとうなだれる私。

そんな私の隣で「仕方ないね」と、少し困ったように笑う梓希くん。


夏休み初日、私たちは図書館の前に来ていた。
きっかけは私。



『えっ……数学の課題の量可笑しいのでは……?』



終業式に配られた課題一覧が書かれたプリントを見て驚愕したのを覚えている。
私は数学がなによりも苦手だから、梓希くんにヘルプを求めたのだ。



『一緒に課題?いいよ。夏休みも蓮に会えるの嬉しい』
『……そーいうことさらっと言わないで』



近くの図書館で待ち合わせる約束を取り付けたというのに、なんと今日は休館日。
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