゚・*:Plesance Sinfonia:*゚・
◆衆生の書◆

*番いの姫君*

 私は、あの娘が大嫌いだ。
嫌悪の塊、そうとしか言いようが無い。

薔薇のように色づいた頬、純粋無垢な澄んだ瞳、誰もが愛おしいと思うような顔立ち。
そして愛くるしいその心・・・。


全てが憎くて仕方が無い。
いっそ殺してしまいたい程だ。

しかしそれを行動に移すことなどはできる訳が無い。


何故なら彼女は私の妹なのだから―――。




 国の名は【フェム=イニーネ】。
安泰で平和なプレザンスの国の中の一つである。

国王君主制を重んじる国であったが、現国王ガストロ・イニーネには跡継ぎがいなかった。
子に恵まれなかったのだろうか、男の子が生まれなかったのだ。

しかしガストロ・イニーネには溺愛する愛娘が二人いた。


双子の娘、リル・イニーネとエヴァ・イニーネ。


リルはエヴァよりも寸分早く生まれたので、実質的には姉となる。
エヴァは敬意を表しリルを“お姉様”と呼ぶのだった。

二人は双子だというのに全く持って対照的であった。


妹のエヴァは文字通り華の様な娘だった。

誰もがその姿を見れば癒しを覚え、心なしか柔らかな空気に包まれるような気分にさえなった。
優しさを第一に考える愛くるしいほどの姫君。


一方リルは漆黒の髪を持つ陰気な性格であった。

無口で感情を表に出さないために仏頂面だと影で言われている程だ。
国務はきちんとこなし、その敏腕さ、聡明さは誰もが認めている。
しかしどこか関わりにくいような空気を持った娘であった。


後継者のいない今、国王ガストロは二人のうちどちらかを君主にすることを決めた。
つまりは女王がこの国を治めるのだ。

フェム=イニーネの国の民はその話題で持ちきりだった。





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