記念写真を一枚
「あの、す」

「ごめんな」

「え?」


なんやかんやベッドまで運び、寝かせてもらって申し訳なくなり謝罪の言葉を述べようとした。

だが、その言葉は彼によってかき消された。


「早めに休ませてあげられんくて」


そう言って体温計やら枕やらを用意してくれている豚平さんは、自分を見ているようで他の誰かを見ている気がした。


「いえ、謝るのは俺の方っすよ。すいません」




ピピピと電子音がなり、体温計を見ると39度もあった。

通りで体がだるかった訳だ。


「うわ、こんなに熱あるん?さ、さすがに医務室へ行かんとあかんちゃう?」


体温計を見た途端わたわたと慌てだした彼をぼーっと見ていたら、急に笑われた。


「医務室、行きたくないん?」

「……い、え」

「…… そんな顔されたら、連れてけないやろ」


どんな顔をしているんだと思ったが、頭が痛く鏡を見る気にもならなかった。


「ちょお、口見せてな」


テキパキと口を見たり胸に補聴器を当てたりされ、数分したら薬を持ってきてくれた。


「医療系は、少し(かじ)ってるからな」

「あ、ざす」


なんとか薬を飲み込んだら、ガクッと眠気が来た。


「ん、おやすみ」


ぽすぽすと頭を撫でられ、目が開けられない。

こんなに眠いのに地味に寝られない。


「……気づかれないのは、辛いよな」


それって、どういう。





口にする前に、眠気が勝った。
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