記念写真を一枚
豚平さんの表情がわかりやすくなった今、無表情というのは一番怖い。

怒ったときでさえ表情がある今、無表情な彼に違和感しかない。

なんなら頭の中で警報が鳴るレベルだ。


「努君の進化形みたいやなw」

「言われれば似とるなぁ!!」


確かに、この豚平さんは自分と顔つきが似ている。

自分と彼の写真を横に並べて遊んでいる人達は置いといて、スマホを取りだした。


「豚平さん、こっち向いてください」

「ん?どうしたん?」


豚平の隣に近づき、こちらを向くように言う。

彼が振り向いた瞬間、スマホのシャッターを切った。


「何しとるん!?」

「お、ええ感じにとれたわ」

「せやなぁ……じゃなくて!」


何がそんなに不満だったのか。

少し頬をふくらませて怒る姿は彼の童顔も相まって、幼い子供にしか見えなかった。


「笑っとりますやん」

「努君だって笑っとるやん」


実は写真を撮る時に自分が笑うのは数枚しかない、なんてこの人には言わないでおこう。
< 44 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop